患者さんと医療者の
対話型コミュニケーション
Shared Decision Making(シェアード ディシジョン メイキング:SDM)に基づく治療とは
Shared Decision Making(シェアード ディシジョン メイキング:SDM)についてご存じですか?
SDMは、日本語で「協働的意思決定」、「患者参加型医療」、「共有意思決定」などと表記され、患者さんと医療者の間の緊張を解き、協働して治療に向き合う関係づくりに役立つ可能性を持つ新たな対話型のコミュニケーションとして世界的に注目されています1)、2)。
近年、日本においても、さまざまな疾患領域において、治療決定の際に取り入れられるようになってきた手法です。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の症状、治療、そしてPAH治療を取り巻く環境は患者さんによってさまざまです。患者さん一人ひとりに合った治療を選ぶためには、症状や体調だけでなく、治療に対する疑問や不安、将来の希望なども主治医と話し合うことが大切です。
本ページでは、患者さんが、自分らしくPAH治療に向き合うための方法として、新しいコミュニケーションである“SDM”について紹介します。
SDMは、「患者さんと医療者が、治療を決定する過程を共有する」手法です。
SDMにおいて最も大切なことは、患者さんと医療者が治療を決定する過程を共有することです2)。つまり、患者さんと医療者がそれぞれ意思決定を行い、お互いの合意を得て、その決定に双方が責任を分かち合いながら治療と向き合う手法です1)、2)。
SDMはPAH患者さんが医療従事者から期待すべきこととして、「PAH患者憲章」に示されています。
SDMはPAH患者さんが医療従事者から期待すべきこととして「PAH患者憲章」に示されています。
PAH患者憲章は、国際的に使用されている肺高血圧症ガイドラインに基づいて、患者さん、患者支援団体、医療従事者の意見により作られた世界共通のPAH患者さんのための患者憲章です。
この憲章の中には、「あなたを担当する医療専門家はケアと治療に関してあなたの希望を聞き、そしてあなたを話し合いに参加させるべきです」と、SDMの重要性が示されています。
SDMは、「同意する・しない」に焦点をあてるインフォームド コンセントとは異なります。
一般的に治療を決めるとき、医療者から患者さんに治療の説明を行い、患者さんの同意を得て治療を決定・開始します。これをインフォームド コンセント(Informed Consent:IC)と呼んでいますが、ICでは「同意する」か「同意しない」かに焦点をあてています。
しかし、SDMでは、患者さんと医療者がお互いに情報を提供・共有し、お互いに納得できる目標を共有し、それに向けて治療が選択され、目標を実現するために協働すること2)に焦点をあてています。
SDMでは、患者さん一人ひとりに合った治療を行うために、患者さんの価値観、希望、社会的役割や背景などを「患者さんの情報」として医療者と共有します。
SDMでは、医療者は、専門的な知見や経験による「医療の情報」を患者さんと共有します。患者さんは、病気や体調のことだけではなく、患者さんの価値観、希望、社会的な役割や背景などを「患者さんの情報」として医療者と共有します2)。つまり、SDMは、治療における課題に対する解決策をお互いに協力して見つける過程で、それぞれが意思を決定し、同時に合意する調和的な手法と考えられます1)。
1)中山健夫. 薬局. 2018; 69: 2217-21.
2)藤本修平ほか. 日本医事新報. 2016; 4825: 20-2.